本の神様がいるような気がした日

時に人や何かに出逢い、大きな衝撃を受けることがある。またわからないから知ろうとする内に、どっぷりと魅力にはまることもある。

今週は昔からの馴染みと話す機会が続き、音楽から色彩へ、ノイズとヘッドフォンから哲学と生物学、服から身体拡張と膜と海など隣り合わせにないような事柄を繋ぎ合わせる話の波に乗ることが多かった。
会話の中で思いもよらない話の流れになった時に、私の殻が破れて相手の心が入ってくるような感覚になる。 今日は人を媒介として、本に出逢った少し不思議な日だった。

朝は打楽器とダンスの自主公演に向けてのメールではじまった。それからカフェとホステルが併設しているバイト先へ行き、いつもの様にチェックイン準備をしていた。今日の午後はバイト先の友達とマーケットに行く予定をしていて、カフェでは工場の如く超特急でティラミスやスコーンが作られていた。

午後になりバイクで向かう友達と別れ、バスに乗った時にはマーケット終了二時間前。駅に着いたら友達から間に合わないと連絡があったが、パン屋をやってる友達が出店していたのでそのまま向かった。

会場に着きそうな時に段ボールと籠を抱えた友達が出てきたので、パンが売り切れたのが分かった。娘さんからグラノーラとコーラ味の飴を貰い話していたら、マーケット終了三十分前に。急いで探索して、最後にホホホ座にたどり着いた。ガケ書房の頃から色んな媒体でお見かけしていた。
幾つか並んだ本の中から、西尾勝彦さんの詩集「歩きながらはじまること」が目にとまった。
~風を永遠の音楽に  千年のダンスを踊り続けている~
帯には出会ってしまったという顔をして購入する客が何人もいると書いてあったが、分かるような気がした。

そこから数冊先に又吉直樹さんのマガジン「椅子」が置かれていて、ラジオで又吉さんに薦められていた本が何だったかを伺った。山下さんは他にお客さんがいたのに丁寧に思い出して下さった。
巖谷大四さんの本で、古本屋にあるだろうと教えて下さった。その時に居合わせた女性とケーキを食べたりして、山下さんから素敵なお土産を頂いてマーケット会場を後にした。

数日前にライブをさせて頂いたHawkwindを通り、知恩寺に立ち寄る。お参りして階段を下りたら、戸締りをはじめられ、ギリギリに立ち寄れた幸運を思った。 しばらく歩くと古書 星と蝙蝠の看板を目にして、気付いたら赤い階段を上がっていた。巖谷大四さんの本を探していると告げたら、置いてないけれど善行堂にはあるかもしれないと教えて頂いた。

今出川通りを進み白川通りに出る手前には、昔通っていたバレエ教室があった。懐かしく思いながら歩いていたら、シサム工房というフェアトレードの服と雑貨を扱うお店があった。
お店の方が親切で話していたら、ホホホ座の袋を目にされてマーケット話から美味しい店の話になった。さらに話していると、以前にご一緒させて貰ったミュージシャンの奥さんであることが分かり、なんだか嬉し恥ずかしの気分になって、手を振って下さるのにそそくさと立ち去った。

ようやくたどり着いたら、ジャズが流れていて笑顔の青年がレコードの音について店主と話をされていた。入って右側にいくと世田谷ピンポンズさん関連が目に入り、ちょっと左に行くと夏葉社の本が並んでいた。青年が多分気を使って笑顔でささっと本を買って出られた。
また巖谷大四さんの本を探していると告げたら、右上から左、右下と探して下さった。ついに右側の左奥から巖谷大四さんの「懐かしき文士たち 昭和篇」が発掘された。持っていて探しだした自分を誉めてあげたいと言われたような気がしたので、拍手で喜びと感謝を表明した。 その時にラジオできいたゴッドハンドの持ち主に間違いないと思った。

流れていたジャズはモンクで、又吉さんとの出逢いや京都の本屋、音楽の話など色々教えて下さった。
夏葉社の「昔日の客」の話から、島田潤一郎さんの「あしたから出版社」を薦めて下さった。この本には善行堂の山本さんと夏葉社の島田さんが出逢われた話も書かれている。 好きな本を扱う本屋を生業にしようと思った時に、山本さんは昔日の客を読まれていて、そこから夏葉社での出版に繋がって、又吉さんが話されて、、、と考えたら本の神様という存在がいはるんではないかと思えた。

出逢わなければずっと出逢わないけれど、本を探していると優しい人達が本の価値と本に纏わる物語を伝えてくれて、本以上のものを渡してくれるんだと信じられる一日だった。

また本を読むと、今日を思い出すだろう。