ことばからだ

新年ですが、年末にやった伴戸千雅子さんとのデュオについて記しておきたいと思います。
振付は言葉のみで、動きは相手に託しました。


写真:山下一夫さん

<伴戸さん→大歳 振付>
ふんわり立つ
視線の矢印がからだを突き抜けていくように
どこを開いても影になるところがない。内がない。
背中から首筋にかけて、空気との接点に意識を向ける
耳のうぶ毛がのびていくサマを想像する
うぶ毛が呼吸する
耳の穴が大きく広がる
目の穴、鼻の穴、口の穴も広がる
からだの穴が大口を開けて何もかものみこもうとしていく
奥の奥からうぶ毛がのびてくる
そうか、何億年も前からこれは芽をだし、のびていたんだなァと
遠くで思い
うまくそれが育つように、日の目を見るように
からだ中の穴を広げて、のばしてやる
あとはもうひっくりかえって土にかえる

<大歳→伴戸さん 振付>
歩く/ゆっくりとした速度で
手をのばす/かきまぜる/ついばむ/足で
弧を描く/計りにのせる
休む
身のまわりを整える/心拍数があがる
足をとめる
まわりまわって/抜け落ちる/遠くを見る
口の中を噛む/口を開ける/目の端を追う
腰に手をやる/脇の下をのばす
首がまわらなくなる
指を広げる/腹が笑う/足裏を床から離す
閉じる/広げる/止まる
記憶
届かない/まわる/聞こえない
見ない/笑わない/顔/そらす
裏をかく/視線/あふれる
永遠/何億年も彼方にある
ここにない
息/すぼむ/嗅覚
まがる/先/心臓
不在
やまない/ひそむ/抱擁
爪痕/洪水/溶血
しめる/ゆれる/降り止まない
音色/根
根をはる/音

両方とも身体にまつわる言葉を多用しているのが特徴です。
下手前方にマイクを置き、振りを付けた側が相手の動きを見ながら読みます。
交代し、互いのを読みあった後は即興でデュオになります。

<デュオの導入としての言葉>
閉じて 開いて(足を閉じて開いてと動かし、横揺れになる)
継続(一人は繰り返す) 
ズレて(もう一人がリズムをずらす)
波に乗る(サーファーのように波に乗る格好になる)
くじらが通る(目の前を巨大くじらが通ると仮定)
指をさす(くじらをながめながら、くじらを指さす)
指が話す(両手の人差し指同士が会話するように動かす)
ひそひそ話・・・

デュオになると、相手の言動についていったり、会話したり、全く違う選択をしたりと掛け合いが出来るようになります。
例えば、架空の隕石を相手だけに落としたり、イメージする力は相手より勝っていると言ってみたり、言葉の選択に世代間を入れてみたり、 色々遊べます。
また言葉を使わず、相手が何かを落とす動きをすれば、拾い集める動きをしたり、前後の奥行きを使ったりも出来ます。

二人いると関係性が見えてきて、それぞれが好きなように動くよりも何か関連があった方が発展しやすく面白いように思えました。
時間に制限をつける以外にも、「例のやつ」とあらかじめ決めた振りを同時に行ったり、ずれて行ったりもしました。
途中で照明をしてくださっているダンサーさんにも照明を変えてもらったりし、後半の即興のシーンの終わりは暗転の方が先になり 「終わり」と言う終了になりました。
動きが進んでいても、1つの言葉の余韻が残ってると思う瞬間もありました。

想像だけで通じ合う世界は、見に来ていたお子さんに好評で、ここが面白かったとか僕は家でこの動きをしていると教えてもらったりしました。 大人は漫才をみているようやったという感想を何人かくれました。
多分伴戸さんとじゃないと出来ない掛け合いがあったと思います。
言葉を受けて、想像している以上の動きをしている伴戸さんを見ながら、どう動いてもらったら面白いかを考えていました。その分自分は淡々としていて、伴戸さんにとっては動かしにくい人物になりくさっていたようです。
キーワードとなる言葉が幾つかあり、そこからの展開を頭で考えている内にも身体は動いていて、身体の動きから言葉が出てくる時もあったように思います。ただ言葉が先にあるというよりも、言葉を飲み込みながら動いている時、つまりすぐ反応している時の方が見てる人と連動している感がありました。

伴戸さんに書いた言葉のベースは2016 年にあって、その辺りの文を見直すと未だ進歩していなかったと気付かされます。

「気持ちが揺るぎないなんてことは一度もなかった。
ただ下の方にどろどろしたものが渦巻いていて、
何を拾ったらいいかわからなくて、
拾った端からぶちまけてしまっていた。」

今年は丁寧に身体から出る言葉を拾い、優しく誰かに渡すことが出来たらと思います。

2018#1

今からPumaで初踊りです。